台湾では梅のあく抜き/渋抜きを「殺青」と言い、青梅を使った一部の加工品を作る前に必ず行われます。実際にやってみたのでその経過を書き記しておきます。
目次
梅のあく抜き/渋抜き
梅の実の中でも特に出始めたころの収穫したばかりの青梅は灰汁が強く、渋味が強烈だったりするようです。梅干しを作るにしても、木の上で完全に熟し、自然落果した黄色い梅を使うと柔らかくておいしい梅干しができるのだとか。自然落果したか見分けるコツは、ヘタ部分が残っているかだそうで、自然落果するとヘタが残らないのだそうです。
今までもこの渋味には苦しめられてきました。梅の品種によっても異なるようですが、梅が苦かったりするのは日本も台湾も共通なようです。
梅はそもそも苦味を持っていて、熟すにつれて徐々に薄れていくという性質があります。完熟の黄色い梅を使って作られる梅干しに苦味がほとんど感じられないのはそういう理由からだそうです。
問題は青梅のうちから加工する梅酒や梅シロップなど。台湾でも青梅を加工する食品はたくさんあります。何も考えずに青梅をそのまま使うと苦味に苦しむことになります。
過去の経験から、購入した青梅を水に数時間浸しているだけでは苦味がほぼ消えないと認識しています。
かといって追熟のために部屋で放置していても、徐々に黄色くはなっていきますが、むしろ水分が抜けてシワシワになることの方が多かったです。
追熟もできず、水に浸すことでもあく抜きが困難となり、素人の私には八方ふさがりに感じられる状況となっておりました。
梅干しには黄色い梅を買う
3月末、2023年も梅の実を購入しました。まだまだ固い青梅です。短い梅のシーズンでも、開始直後と終了前では上の性質(熟し具合)が異なるという単純なことすら知らなかった私。
梅干しを作るには黄色くてしっかり熟した梅が良いです。短い梅シーズンの中でそのような熟し具合の進んだ梅が売られるのはシーズンの後ろの方。
2023年はどうすべきか。もう一回買うべきか、あきらめるべきか、今だ答えが出せておりません。ただ、もう買ってしまったものは仕方がありません。どうにかできないか台湾の情報を調べてみたら「殺青」が必要だという記述を発見。つまるところあく抜きに相当する作業のようで、2023年は殺青を試してみることにしました。
台湾式のあく抜き「殺青」をやってみた
青梅が苦いのはここ台湾でも同じで、日本同様に梅の加工品が多い台湾ではその苦味を消すための作業を殺青と言って、販売者が代行してくれたりもします。
市場で商品を買う時の注意点として、店主は客も当然そういった注意事項を知っているものとして販売されていることが多いのか、一切そういった情報を提供してくれません。一言「殺青やってね!」と言われれば「え?殺青ってなんですか?」という会話が出来そうなものですが、すでに知識のある方からすれば「殺青しない人なんていないでしょ?何言ってんの?」ともなりかねません。そう、店主は何一つそんなことは言いません。過去もそしておそらくこれからも。自分が扱うものは自分で勉強するしかありません。
殺青は文字通り青々とした梅の実の青を取り去る作業で、実が実際に青々とした緑から黄色になっていきます。
と考えると、この青々とした色味が渋味の正体だったりするのかもしれません。上記作業により通常の追熟作業とは違った形で色が黄色に近づいていきます。そうすることで色が変わり、青さが抜け、同時に渋味も抜けていくのかもしれません。
なお、砂糖漬けにする場合、何度かに分けて砂糖漬けにする方法があり、最初に抽出したエキスは苦いため捨てるそうです。そして、2回目からは砂糖と水を煮て作ったシロップを足して漬け込みます。塩で殺青をした後、砂糖でさらに苦味を抜くんですね。なお、このエキスを捨てる作業も2回される方がいるようで、1回目は苦味、2回目は酸味を抜くのが目的なのだそうです。
粗塩で15分もむ
梅の渋抜きのために粗塩で15分間揉みます。すると、梅の表面がじんわりと濡れてきて、中から水分が出てきているのがわかります。
揉み方は様々です。大きなタライに梅と粗塩を入れ、ビニール手袋をして手で揉み込むか、タライではなく頑丈なビニール袋に梅と粗塩を入れ、手で揉み込むかです。
素手で触ると粗塩や梅の突起で手を傷つけてしまうことがあるので、タライを使うならビニール手袋を使った方が良いです。
粗塩の量は揉み込める量なら何でもよいと思いますが、例えば700gの梅なら150gの粗塩で十分です。
私は洗う前の梅に粗塩を入れて揉みましたが、その液体は薄っすらと茶色くなりました。もともとの汚れもあったと思われますが、渋味も出てきていたのではないかと思います。
ここでの揉みが足りないと、うまく黄色にならないことがあります。しっかりと時間をかけて揉み込むと良いです。注意点としては、梅全体が濡れたからOKということではなく、しっかりと15分という時間をかけて揉み込むことが大切です。濡れただけではOKではありません。
塩水に8時間浸ける
粗塩で揉んだ後、梅だけを取り出して水に浸けます。梅に粗塩が付いているので、自然に塩水になります。時折混ぜたりゆすったりしながら8時間塩水に浸けます。
浸けていると梅から泡のようなものが出ているのに気が付きます。そして、泡は水面にたまり、灰汁のような様相を呈します。梅の色にも変化があって、若干黄色に近づいていきます。
少量の水を流しながら一晩
塩水に8時間浸けた後は水を交換し、今度は蛇口からほんの少しだけ出して流水に一晩さらします。または、水を何度か交換しながら、8時間ほど放置します。ここでは塩気を取ると同時に、さらにアク、渋味を抜いていきます。この作業が終わるころにはだいぶ黄色くなっています。
ここで黄色くならない梅もあり、思うに、それらは粗塩で揉む作業が足りていなかったのではないかと思います。事実、手抜きをしたときは半分ぐらいが黄色くならず、それらは緑が残ったままか、むしろ茶色く変色していきました。
茶色く変色したのは傷んでいる証拠です。はっきり言って失敗。これも勉強料でしょうか。それらを梅シロップにできないものか思案しております。
乾かす
塩水に8時間、流水で8時間浸けた後はキレイなタオルで拭き、数時間乾かします。
水に浸けた梅は傷みやすい
殺青をした後の梅は、水に浸ける作業を経ているため非常に傷みやすいです。殺青が終わったらすぐに加工を開始する方が良いと思います。
最後に
殺青は、粗塩で揉む作業を手抜きせずにしっかりと行う必要があります。これで本当にあく抜き、渋味抜きができるのかは完成品を試食する数か月後までわかりませんが、できることを期待しております。
毎年のことではありますが、梅仕事を完璧にこなすことができずにおります。次はシーズン中盤以降に買うようにするのと、殺青をしっかりマスターすることが大切になりそうです。
2023年目で梅仕事は5回目でしょうか。反省点がまだまだ多いですが、これからも精進してまいります。