ベランダ菜園やるなら知っておきたい『タンニン鉄』の豆知識

タンニン鉄を自作してベランダの植物に与えています。まだタンニン鉄を使ったことが無い方のために、経験したことや勉強したことをここに書き記しておきます。これを読めば、多少タンニン鉄について知ることができます。(以前の記事を再編成しています)

タンニン鉄について

もともと挿し木をするにあたって、発根剤の代替になるものはないかと思って情報収集する中でタンニン鉄というのを知りました。2020年ごろに農業系の雑誌に「タンニン鉄」というのが掲載されたことがここ数年タンニン鉄が注目されている理由のようです。

さて、そのタンニン鉄ですが、植物の生育に大きな効果が期待できるとされる情報もあれば、表向きは変化を感じられないが、根の張りが違うと言った情報も見聞きします。実際どうなのか。そんなに難しいものでもなさそうだったので自分で作って試してみました。

タンニン鉄の成分

簡単に言えば、タンニン鉄はタンニンと鉄分が結合したもの。タンニン鉄には二価鉄(Fe²⁺)が含まれるそうです。二価鉄とは、植物が吸収しやすい形になった鉄の事(鉄イオン)。

黒錆(くろさび)には二価鉄(Fe²⁺)が含まれるそうです。タンニン鉄も黒いことから、もしかしたら二価鉄が含まれているのかもしれないということは誰しもが考えることだと思います。実際に実験を行った方もいて、事実、その時のタンニン鉄には二価鉄が含まれていたそうです。

余談ではありますが、厳密にはタンニン鉄=黒錆とは言えないという意見もあるそうです。それは、黒錆とは一般に鉄を900℃程度の高温で熱することによる酸化被膜の事を指すからなのだとか。中華鍋とか南部鉄器とかがそれですね。

植物は微量要素としてカルシウムやマグネシウム、さらに鉄などを必要とします。その鉄を補うためには二価鉄を補うことが効率的で、その二価鉄を含む溶液としてタンニン鉄がある、ということのようです。

三価鉄の吸収

鉄は酸化すると赤茶色になります。酸化することで生成される赤錆(あかさび)は三価鉄(Fe³⁺)を含むのだそうです。でも、三価鉄は植物にとって吸収しにくい物質らしく、例えばイネやムギは酸(ムギネ酸)を出して、その酸が酸化鉄と反応して可溶性のムギネ酸鉄になり、植物はその水に溶けだした鉄分を吸収するのだそうです。

タンニン鉄の使用期限

タンニン鉄は作ってからすぐに使います。そうしないと腐敗することがあります。タンニン鉄は腐ります。出来上がったらすぐに使うのが良いです。そのため、タンニン鉄の使用期限は1日~1週間程度だと考えています。使用した素材によってちょっと異なります。

タンニン鉄は腐る

紅茶や緑茶で作った時は腐敗を感じなかったのですが、コーヒーで作ったタンニン鉄は腐りました。蓋をして密閉しているのに部屋が異臭で満たされ大変でした。特に水道水(常温)とコーヒーで作ったタンニン鉄は最初のころからかなりたくさんの泡が出ていて、なにやら発酵しているようでもありました。

紅茶で作ったタンニン鉄に酸化鉄(赤錆)が発生したこともありましたが、それとはまた別で、コーヒーで作ったタンニン鉄はまさしく腐っていました。

後日、同じ釘を使ってコーヒーと熱湯でタンニン鉄を作ったところ、難なくタンニン鉄が完成したので、常温の水道水を使ったことで、例えば瓶の中に付着していた菌が繁殖しやすかったのではないかと思います。瓶は使いまわしています。ただ、難なく出来上がったコーヒーによるタンニン鉄も、数日放置したら発酵し、腐敗臭を放ちだしました。コーヒーでタンニン鉄を作る場合は熱湯を使用し、すぐに使い切った方が良さそうです。

紅茶で作ったタンニン鉄は長期保管すると変質する

3か月鉄釘を入れたまま放置したタンニン鉄
3か月鉄釘を入れたまま放置したタンニン鉄

図らずも3か月鉄くぎを入れたままの状態で放置したタンニン鉄の残り、おおよそ100mlほどがあったので、それを観察してみました。これは紅茶で作ったタンニン鉄です。

見た目は黒色から茶色っぽくなり、成分が沈殿しているようでした。これは、鉄との反応が進み、赤さびにも似た成分と化しているのかもしれません。

何かの成分が沈殿している自作タンニン鉄
何かの成分が沈殿している自作タンニン鉄

ふたを開けたときのニオイは作った時と変わりませんでした。個人的に嫌いなニオイではありませんが、それは紅茶を使用したからかもしれません。

3か月も放置すると変色して沈殿します。ニオイは変わりません。でも、成分的に変化があるかもしれない(赤錆のようにも見えます)ので、使用は控えた方が良いでしょう。使うなら、作ってから1週間以内が良いのではないかと思います。そもそもドブのようなニオイがするのが正常な状態らしいのですが、あまりに変なニオイがするなら使用は控えた方が良いのではないかと思います。

タンニン鉄の保存方法

私は蓋をして室内の冷暗所に置いていました。紅茶や緑茶で作った際、10日ぐらい放置しても特段腐っている様子はなく、異臭と呼べるほどのニオイは発生しませんでした。

コーヒーでタンニン鉄を作った際は腐敗してしまったのですが、紅茶や緑茶の場合冷暗所での保存で問題なかったので、その保存方法が問題だったとは考えていません。

そのため、材料によって違いはあるものの、タンニン鉄は常温で、室内の冷暗所に置いておけば良いと考えています。

タンニン鉄の希釈

二価鉄などは希釈して使用するようなのですが、タンニン鉄は希釈せず、原液をそのまま使用しました。それで特段問題は発生しませんでした。タンニン鉄の希釈は不要です。

タンニン鉄のph(ペーハー)

お茶はアルカリ性と言われたり酸性と言われたり、使用する水の硬度によってphが変化すると言われたりします。でもphなんて試験紙でもない限り測れない。そこで、緑茶で作ったタンニン鉄にクエン酸を入れてみたところ、黒色がちょっと黄色がかったような緑がかったような透明になりました。さらに、それとは別で重曹も入れてみたのですが、重曹でも若干茶色っぽくなったような気もしますが、本当に微々たるものでした。phまではわかりませんでしたが、明らかな変化が現れたのは酸性のクエン酸を入れたときでした。我が家のタンニン鉄はアルカリ性のようです。これは上述の通り、使用している水の硬度にもよるのかもしれません。

左:タンニン鉄+クエン酸 中:タンニン鉄 右:タンニン鉄+重曹
左:タンニン鉄+クエン酸 中:タンニン鉄 右:タンニン鉄+重曹

このことから、タンニン鉄は土壌のphにも影響を与える可能性があると考えられます。とはいえ、オジギソウに毎日与える程度では特段オジギソウ自体に即座に悪影響が見られるというものでもありませんでした。酸性土壌だったらむしろ中和されて良かったりもするかもしれません。それに、そもそも使用している水の硬度によってphが変化するのであれば、タンニン鉄だからというよりも、その水を使っていること自体に問題が発生してもおかしくありません。

タンニン鉄の散布頻度

タンニン鉄は希釈する必要はありません。原液を水やりのたびにオジギソウに使用した際は特段悪影響を感じませんでした。

しかしながら、phなどの細かい土壌データを確認したわけではなく、実際クエン酸をタンニン鉄に入れると色が変わるということから、土壌phへの影響が多少なりとも考えられるため、土壌のデータを確認しながら使用するのが良いのではないかと思います。

なお、我が家にはあいにく土壌データを計測する機器がなく、実験ベースではありますが一週間に一回程度、600ml作ってちょっとずつを多数の植物に与えたりしています。

メネデールの代わりにタンニン鉄は使える?

メネデールは二価鉄イオンの活力剤です。メネデールを少しだけ入れた養液で水挿しをすると発根が促されると聞いたことがあったので、水挿しにタンニン鉄を使用してみたのですが、見事に失敗しました。

ただ、水挿しはただの水でも失敗することがあるので、タンニン鉄が良くなかったのか、それとも他の理由があったのかはわかりません。いつか、挿し木に適した植物で、適した時期に、条件をそろえて検証してみたいです。

赤玉土などの培土を用いて挿し木をすることで発根することが期待できる樹種なら、単にルートンをつけて適期に培土に挿しておくのが良いように思います。

なお、今回のテーマであるお茶などを用いて自作するタンニン鉄は希釈せずに使いますが、メネデールは希釈して使います。

※メネデールは二価鉄イオンを含む活力剤で、ルートンは植物ホルモン剤/植物成長調整剤(α-ナフチルアセトアミド)です。ルートンは食用作物には使用しないよう注意書きがあります。

お茶やコーヒー以外を使った二価鉄養液

クエン酸などを用いた二価鉄養液の作り方もあります。しかし、クエン酸で作られた二価鉄養液は希釈して使用しなければならないため、タンニン鉄と比べると多少取扱いが煩雑になります。

タンニン以外のポリフェノールを使う場合

黒豆を煮る時に鉄くぎを入れますが、あれももしかしたら似たようなものかもしれません。というのも、タンニンとは違いますが、黒豆の黒い皮にはアントシアニン系のポリフェノールが含まれるからです。黒くなるということはもしかしたら、と淡い期待を持っております。実際にやったことはありません。

あく抜きをするゴボウ
あく抜きをするゴボウ

同様にポリフェノールと言えばゴボウにもポリフェノールは多く含まれています。ゴボウに含まれるポリフェノールはクロロゲン酸(コーヒーポリフェノール)系だそうです。実際にゴボウをささがきにして灰汁抜きをすると、水がみるみる変色していきます。

ゴボウの灰汁でタンニン鉄づくりは失敗
ゴボウの灰汁でタンニン鉄(ポリフェノール鉄?)づくりは失敗

この灰汁だらけの水を使ってタンニン鉄に似たものが作れないか試してみたのですが、残念ながら黒くなりませんでした。発酵したのか上の方には泡が、そして下の方には茶色っぽい沈殿物が発生しましたが、釘の色が黒に変色しなかったため私はこれを失敗だととらえています。ポリフェノールなら何でもよいというわけでもなさそうです。

クロロゲン酸(コーヒーポリフェノール)と言えばコーヒーに含まれる代表的なポリフェノールです。タンニン鉄はコーヒーでも作ることができますが、コーヒーにはクロロゲン酸も含まれますが、タンニンも含まれているので、タンニンが反応しているということなのかもしれません。

タンニン鉄を使用することによる害虫への影響

タンニン鉄を使うことで例えばアブラムシやハダニなどが減るかというと、個人的にはそうでもないかなと思っています。葉面散布などもしたことがありますが、特段虫が付かなくなったとか、そういう印象はありませんし、1回程度ではアブラムシはしつこく葉裏にくっついたままでした。

もっとも、タンニン鉄に限らず、葉裏などにしつこくしつこく何かしらの液体を噴霧し続けたらそこに居座り続ける虫は減ってくるかもしれません。ポイントはそれがそのスプレーの成分と関係があるのかということですが、一概に関係があるとも言えないように思います。

一つ言えることは、タンニン鉄を希釈せずに葉面散布すると、ちょっと薄い墨汁をかけたかのように黒くなり、滴り落ちるタンニン鉄によりベランダに黒い水滴が残ったり、葉に付いたタンニン鉄がそのまま乾いてなんだか病的な見た目にはなるということです。

最後に

植物は鉄を吸収して云々と言われても実はピンときておりません。なにせ見えないものですから。ただ、なんとなく良いんだろうなと。植物にたまに与える分には良いこともあるのかもしれないな、ぐらいに考えています。

作るのは楽しいですし、植物にそれを与えるのも満足感があります。私の場合、その満足感のためにやっているような感じです。