愛媛38号というみかんが中国に流出?それ台湾にもあります

子供のころ、我が家ではみかんを箱買いして廊下に常備していました。食後に1つ、おやつに1つと、おいしいみかんの思い出はつきません。祖父母の家に遊びに行ってもやはりみかんをほおばっていました。それぐらいみかんが好きなのですが、台湾では一般のスーパーで日本のみかんを見ることはあまりありません。ただ、苗木は売られているという不思議な状況。愛媛38号も売られているようです。

愛媛38号(愛媛果試第38号)とは

愛媛38号とは日本のみかんの品種の一つで、日本では商業的に栽培されてはいないのに、なぜか中国で商業的に栽培され、しかも大成功しているというのです。

愛媛38号という呼び名は、商業栽培されていないがために、開発時の名前で呼ばれているからで、例えば同じように愛媛果試第28号は流通させるにあたり「紅まどんな」という名前になりましたし、愛媛果試第48号は「紅プリンセス」として販売されています。

愛媛の柑橘類で種苗法の保護対象として登録されているのは愛媛中生(登録番号4121)、愛媛果試第10号(登録番号10486)、愛媛果試第14号(登録番号12293)、愛媛果試第16号(登録番号10485)愛媛果試第28号(登録番号12981)、愛媛果試第48号(登録番号29243)です。愛媛果試第38号は研究所内にしか存在しないはずのもので、登録番号も振られていないようです。

中国に苗木が流出した愛媛38号

1998年、中国の研究団が30以上の新品種を中国に持ち帰り、そのうちいくつかは増殖に成功しました。その一つが愛媛38号だと言われています。ただ、愛媛県としてはそれが本当に愛媛38号なのかはわからないとしています。名前としてそのような名前を付けているだけの可能性と、本当に日本から持ち出した愛媛38号である可能性の両方が考えられるようです。ただ、わかっているのは、中国はおろか、その他の国でも中国産としてこの愛媛38号の人気が広がりつつあること。

2020年11月、日本では品種作成者の権利を守るために種苗法の改正案についての審議が始まりました。直近ではシャインマスカットの流出が話題になりました。種苗法の改正に当たり、中国では新品種の入手が困難になるという見通しとともに、これは逆に中国の農業にとってのチャンスでもあるとしています。日本の品種ではなく、中国で品種改良された新品種が世界を席巻するようになるチャンスであると。

日本でも登録されていない愛媛38号。中国でも日本主動では品種や商標の登録がなされていないのではないかと思います。それか、されているとすれば、中国の方が独自に行ったのでしょう。

中国では果凍橙という名称や愛媛38号として流通しているのだとか。

中国で愛媛38号はそのまま『愛媛38号』としてか、『果凍橙』として販売されているのだそうです。果凍とはゼリーのことです。例えば愛媛28号の紅まどんなはゼリーのような食感が特徴です。愛媛38号もそのような特徴があるのかもしれません。

台湾のスーパーで売られるみかん

台湾でいただいた柑橘類(品種不明)
台湾でいただいた柑橘類(品種不明)

私が住む台湾のスーパーで売られているミカンはほとんどがマーコットです。どこ産とは特に書かれていないことが多いです。味は悪くありませんが、皮は固く、種も多いのであまり買いません。マンダリンが売られていることもあります。

時折日本から輸入したみかんが売られていることもありますが、価格は3~5倍ぐらいします。高級品です。高くて誰も買わないからか、古くなって安売りされていることが多く、安くなったところで買って食べることはあります。新鮮な物は高くて買えません。

近隣のスーパーで愛媛38号の果実が売られているのは見たことがありません。

台湾の苗木屋で売られるみかんの苗木

台湾で日本のミカンを食べたいと思っても高いからなかなか箱買いみたいなことはできません。そこで、自分で育てたらどうだろうともうずいぶん前から苗木をチェックしています。

台湾では「日本の」とキャッチコピーにつけるだけで売り上げが上がるという法則(?)があります。ネット通販では「日本の」と銘打ったミカンの木が売られています。

その中に『果凍橙』『愛媛38号(號)』と書かれたものも。『愛媛蜜柑』と書かれたものもおそらく同じでしょう。『紅美人』という品種も別名『果凍橙』として売られていますが、紅美人は愛媛28号の紅まどんなのことらしいです。つまり、単に『果凍橙』とだけ書かれている場合、28号の可能性もあるし、38号の可能性もあるということのようです。

なお、ある販売店の説明には「日本のミカンの中で最高等級の物」と書かれていました。台湾の種苗店です。また、あるお店は「本物の愛媛38号」と書いていました。

名前だけで判断するなら『不知火』も『温州みかん』も売られています。ただ、これらが本当に不知火や温州みかんなのかは不明です。

最後に

AとBを交配して作られたCを登録した機関、または個人がいる場合、開発した彼らの権利を守ろうとするのが種苗法。

例えばサツマイモなんかは種芋から育てたらクローンですし、接ぎ木した苗木は完全なクローンですね。

例えば海外で、日本から輸入された野菜などの種を取って栽培しても、それがもし交配種なら同じものはできないだろうという話もあれば、確かイチゴの一部の品種は種から育てるのが一般的なんて話もありました。交配種を種から育てる場合に親と同じものができるのかは不明ですが、そういう品種もあるのだと聞きました。