台湾で和牛が品種登録?流出じゃない特殊な事情

2024年6月17日、台湾の農業部(農林水産省に相当)が広告で台湾和牛の品種登録を発表しました。和牛を食べたいと常日頃から思っている私は思いがけず登場した台湾の和牛のニュースに驚くとともに興味を持ちました。

牛肉食べるなら和牛が最高

日本のみならず世界で人気の牛肉に和牛があります。英語表記のWagyuももはや世界共通語として認知されている感もあるように、とにかく和牛は世界で不動の地位を占めるようになったように感じます。

和牛はその名の通り、日本の在来種をルーツに持つ牛の品種の一つで、今では日本だけでなく、世界で和牛が生産されています。

和牛と国産牛は別物

和牛と国産牛は別の物です。和牛が品種を指すのに対し、国産牛は品種ではなく、飼育期間の大半を日本で過ごしたことを表す言葉です。

つまり、国産牛はいわばMade in Japanを表すだけで、例えば東南アジア原産の果物を日本で栽培しMade in Japanの果物とするのと同じようなことです。

日本の在来種にルーツを持つ牛と、日本で生産された牛、どちらが食べたいかと言うと、日本の在来種にルーツを持ち、かつ日本で生産された牛を私は食べたいと思うのですが、和牛はアメリカやオーストラリアでも生産されており、特にオーストラリア産の物が世界に輸出されています。

挽肉と米は国産牛

私の住む台湾では、日本の有名レストラン「挽肉と米」が和牛を使ったハンバーグ屋だと考えられている場合があるのですが、挽肉と米のホームページには国産牛とは書かれていましたが、和牛とは書かれていませんでした

和牛の流出

和牛は1960年代からじわりじわりと世界に流出していきました。1970年代には牛そのものもアメリカにわたり、そしてアメリカ経由でオーストラリアにもわたりました。当時は法律で押さえられなかったのだそうです。

もっとも、過去には日本も海外から持ち込んだ植物や動物を独自に発展させて生産している例(例えばサツマイモも数百年前に中国から来たもののようです)もあったでしょうし、この問題は非常に難しい問題だと感じます。

和牛生産網に台湾も参加

台湾の和牛も和牛と言うだけあって日本の在来牛にルーツを持つ牛であることは調査の結果わかっていることなのですが、台湾の和牛に関しては他の国のそれとはちょっと事情が異なります。

1930年代の日本統治下の台湾で、当たり前に日本本土から船で連れてこられた和牛を日本人が台湾で育てていたものの子孫を残し、今日までつないできたものが台湾和牛です。

流出したというよりは、日本が残していったものを有効利用していると言ったところでしょう。

台湾和牛とは

台湾和牛は1930年代の日本統治下の台湾で、日本から連れてこられた和牛の生産が開始されました。日本統治が終わった後、残った牛たちは継続して育てられていたのだそうです。

そんな中、2016年に故李登輝元総統が台湾の牛を育成する計画を立てました。そしてこの牛たちを購入し、もともといた陽名山から花蓮に移動し、花蓮で飼育することにしました。現在、花蓮の兆豐農場で飼育されているそうです。

花蓮の兆豐農場

2020年ごろ兆豐農場で撮影した牛(血統不明)
2020年ごろ兆豐農場で撮影した牛(血統不明)

兆豐農場は観光客も受け入れている広大な敷地を持つ動物公園のような場所です。私も行ったことがあります。なるほど、あそこには確かに牛がたくさんいたのですが、その中に台湾和牛もいたのかもしれませんね。

兆豐農場では簡易的ではありますが、子牛たちにミルクを与えたり餌を与えたりする体験もできます。私が訪問した当時、餌を与える体験ができた牛が台湾和牛だったのかは不明です。

台湾和牛は源興牛

台湾和牛というのは通称で、品種名は源興牛です。源興牛の源興とは李登輝元総統の旧居である源興居から取られた名前なのだそうです。

品種登録の審査の上、2024年6月17日に登録が許可されたことが台湾農業部により公告されました。

李登輝元総統がなくなった後は劉泰英氏が引き継いでいて、劉泰英氏が今回の品種登録の申請者となっています。

検査の結果、日本の和牛にルーツを持つことは判明しているのですが、そのルーツは但馬牛とも見島牛とも言われているようです。なお、申請書には「台湾原生種(臺灣重要原原種種牛)」と書かれていました。

台湾の牛肉は95%が輸入

台湾で食べられる牛肉
台湾で食べられる牛肉(源興牛ではありません)

台湾でも牛肉は売られているのですが、どれを見てもオーストラリア産かアメリカ産です。

牛肉は他の食肉に比べると高いので、普段牛肉を買うことはありませんが、ちょっと奮発したい日などは買うことがあります。

台湾和牛はどこで食べられる?

源牛火鍋餐廳という台北の火鍋屋で源興牛が食べられるとのことだったのですが、現在は臨時休業となっています。口コミを見ると、予算は一人800元前後、牛肉以外もなぜか高い値段設定になっているとか店員の態度などを指摘する声もありました。

どこで食べられるか探しているのですが、他は見つかりませんでした。現在、源興牛を食べられる場所は不明です。

最後に

台湾のスーパーで売られている牛肉はほとんどが外国から輸入されたものです。

この状況が数年後には変わり、台湾産の源興牛が台湾のスーパーに並ぶ日が来るのかもしれません。そうなったらぜひ一度は食べてみたいなと思っています。