2024年の2月ごろ、手に入れた杏梅の枝を、実生の梅の木に接ぎ木しました。接ぎ木の方法はいくつかありますが、採用したのは腹接ぎ(胴接ぎ)で、幹の途中に切り込みを入れて、そこに穂木を接いだのでした。
接ぎ木自体は成功し、無事に活着して新しい枝が伸びていったのですが、その後の結果が思っていたものと違いました。
今回はその結果から次回の接ぎ木の参考にするべく、発生したことなどを書き記したいと思います。
目次
接ぎ木に成功した梅の木たちの一年間
我が家のベランダには都合4本の梅の木があります。①購入した胭脂梅、②購入した杏梅、③実生梅に杏梅を切り接ぎしたもの、④実生梅に杏梅を腹接ぎしたもの、の4本です。
①~③は特段問題なく順調に育っているのですが、④は少々想像とは異なりました。順調化順調でないかで言えば、順調ですが、自分が植物の生体を以下に理解していなかったかを思い知らされる結果となりました。
簡単に結論だけを書けば、二本の樹種が一本の木に同居すると、管理が多少複雑になります。
腹接ぎで二種類の梅が共存
腹接ぎは木の幹に穂木を接ぎ木する方法で、木を大きく切るわけではないので心理的抵抗が少なく、比較的取り組みやすい接ぎ木法の一つだと思います。
腹接ぎに成功すれば、好きな場所に枝を増やすことができます。これはいい!と素人の私などは思ったものです。
実際、腹接ぎで接ぎ木した梅の木(杏梅の穂木)は、無事にそこから枝が伸びていきました。
腹接ぎで異なる品種の梅を接ぎ木した場合、一つの木に二種類の梅が共存することになります。
6月の段階ですでに接ぎ木した部分が他を圧倒

腹接ぎだとメインの方に栄養が持っていかれて、接ぎ木の方には栄養がいきづらいかなと思ったのですが、結果は全く逆で、むしろ接ぎ木の方に栄養が流れ、接ぎ木の部分ばかりが大きくなっていきました。
接ぎ木の部分が大きくなることは良いことです。しかし、そもそもの想定が二種類の梅の同居だったので、片方ばかりが大きくなるのは想定外でした。
接ぎ木をする場所、腹接ぎをする場所によっても結果は異なると思われます。実際、胭脂梅にも腹接ぎしましたが、そちらは接ぎ木部分が他よりも成長していません。
11月ごろにはどう見てもバランスが悪い感じに

その後も接ぎ木部分は順調に生長を続け、むしろ他の部分よりも大きく育っていました。バランスを考えるとどこかのタイミングで剪定した方が良かったのかもしれませんが、私はそのままにすることにしました。
そのままにした結果、予想通り、接ぎ木部分だけが大きいという変な樹形になってしまいました。接ぎ木部分が大きく生長することはめでたいことでもあります。むしろそれを狙って接ぎ木をするのが正解で、腹接ぎの場合、接ぎ木に成功したら接ぎ木した部分よりも上は切ってしまうのだそうです。
腹接ぎに成功したら上は切る!

私は接ぎ木よりも上の部分を確かに切りはしたものの、二つぐらい枝を残した状態でした。そのため、さらに変則的な感じになっております。
通常、接ぎ木をする場合は台木は台木と割り切り、接ぎ木部分のみを大きく生長させます。ですが、今回は台木と接ぎ木を同居させる方法を選択しました。
頂芽優勢も意識した接ぎ木を!
腹接ぎをし、接ぎ木部分が大きく生長したものとそうでもないものを比べてみると、接ぎ木位置に違いがあることがわかりました。
同じ腹接ぎでも比較的木の下の方に接ぎ木したものに関しては接ぎ木部分の生長が遅く、木の上の方に腹接ぎしたものは生長が速かったです。
頂芽優勢で上の方が生長しやすいと考えるならば、これも当然の結果と言えるでしょう。接ぎ木をする際は接ぐ場所にも注意したいものです。
一本の木に二種類の樹種が同居した結果

腹接ぎでも切り接ぎでも、できれば台木は台木と割り切り、接ぎ木部分を大きく育てるのが正解だとは思うのですが、一つの木に二種類の花が咲くとか、そういうのにあこがれもあります。
この梅の木の接ぎ木はまさにそんなあこがれを実現するための腹接ぎだったわけですが、二種類の木が同居するとなると、いろいろ問題になる部分もあります。
落葉の時期が違う

落葉時期の異なる樹種を接ぎ木した場合、台木側の落葉時期と接ぎ木部分の落葉時期がずれます。なぜ接ぎ木前に気が付かなかったのかと自分でも自分の浅はかさに驚きますが、これは当たり前で、台木の性質と接ぎ木の性質はそのままなので、当然落葉時期はずれてしまいます。
落葉時期がずれると何が起こるかというと、冬剪定の時期が変わってしまうのです。落葉を待って剪定しようとした場合、台木はすでに落葉が終わっているのに接ぎ木部分はまだまだ青々としているとか。
これを解決するには一本の木に二種類が同居するような形にはせず、あくまでも接ぎ木部分のみを育てるとか、それこそ二種類が同居した状態でも時期に合わせた剪定をそれぞれの部位で実行する、もしくはどちらかに合わせてまとめて1回で剪定をする、などが考えられるかと思います。
生長再開時期も違う

落葉時期が異なれば生長再開時期も異なります。例えば我が家の実生梅の木は一月末ごろには新しい葉が出てきますが、杏梅の部分は二月になっても昨年の葉が大量に残っています。
生長再開時期が異なることによる弊害はそんなにないかもしれませんが、当然開花時期も異なります。いや、開花時期の近い二種を接ぎ木で同居させれば必ずしも開花時期が異なるなどという状況にはならないかもしれませんが、私のように梅の木に杏梅を接ぎ木すると開花時期は異なると思われます。
もっとも、開花時期が異なるのは計算通りと言えば計算通りです。いろんな花を楽しめたらいいな、そんな気持ちも原点にはありました。
二種類の木の共存は難しさも
剪定、植え替え、害虫防除、様々な場面において二種の樹種が一本に同居した状態は管理が難しくなります。
柑橘類やバラ科植物は二種以上の同居に挑戦されている方も多くいるようですが、それ自体が楽しいと思わる場合を除き、あまりお勧めはできません。私はそれ自体が、接ぎ木して様々な樹種が同居する状況が楽しみでもあるのでそのまま育て続けますが、管理は多少複雑になります。
受粉木を接ぎ木すれば一本で受粉がしやすくなる場合もあるのではなかろうかとも思うのですが、それはまた機会があれば試してみたいです。
最後に
接ぎ木をするとき、管理が煩雑になることなど想像もしませんでした。しかし、それはそれでまた楽しいことの一つでもあります。これからもこの実生梅+杏梅は二種類が同居した状態で育てていこうと思います。