外国語を学ぶのに教師は必要か

台湾に外国人として住んでいると、時折「言葉(日本語)を教えてほしい」と言われることがあります。実際に教えたことも何度かあります。ただ、そもそも日本語を教えることを専門にしてこなかった私ですので、試行錯誤はもちろんのこと、教師とはいったいなんなのか、そんなことを考えることもあります。

母語とはいえ、言語を教えることは特殊技能だ

日本で育った日本人だから日本語が話せるのは当然。しかし、それを教えるとなると話は別です。「話せる」と「教えられる」は決してイコールではないと思うのです。

現に、日本語を初めて教えたときはどうしていいかわからない上に、質問にも一切答えられません。そもそも、なんでそんな質問が出てくるのかすら理解できなかったのです。

例えば助詞の意味や、和語漢語の違いなど、例を挙げればキリがありません。我々一般人は外国人学習者に適した形で日本語の理論を学んできていないから、それを説明することができないのです。

外国人向けの日本語の教科書では「形容詞」を「い形容詞」、「形容動詞」を「な形容詞」と表現します。それは外国人にわかりやすいようにするためのようですが、それすら知らないところからのスタートでした。

つまり、日本語が話せることと日本語が教えられることは決して同義ではないのです。外国語としての日本語を学習したことがない日本人が外国人に対して外国語としての日本語を教えることは、そう簡単ではないと、かなり初期の段階で思い知らされました。

それなのにみんな「日本語を教えてほしい」と言います。なぜなのか。

独学で学習できるのではないか

時折「日本語を教えてほしい」と言われるものの、都度、私が思うのは、「自分で、独学でできないのかな?」ということです。

いや、私自身中国語や英語を独学でなんとかできないか模索していて、そういう意味で何かよい方法はないものか、と考えているという意味です。

なにしろ本屋さんにはたくさんの参考書、単語帳、そして辞書が売られているわけで、さらに言えば今やインターネットで動画までアップされている時代です。台湾に関して言えばNHKをテレビで見ることもできます。単語や文法の学習は、どうしても理解できないところを除けば本でできるように思いますし、インターネットやテレビさえあれば日本人が話す日本語を聞く機会も存在するわけです。中には中国語で日本語を説明した動画も存在します。まずはそれで勉強をすれば良いように思うのです。

彼らはなぜ私に「日本語を教えてほしい」と言ったのでしょうか。大体の人が次にいうのは「気楽に覚えたい」でした。つまるところ、学校で単語を暗記し、文法のテストを受けて、宿題を出されて、のような圧力をかけられるのは好きではなく、もっと気楽に勉強したい、ということのようです。いや、確かに簡単に外国語を習得出来たらうれしいですよね。

ただ、やっぱり独学でも可能な気がするのです。独学なら当然宿題もテストもありません。ドタキャンも何も、誰とも約束をしていませんからキャンセルもありません。正しい発音については辞書にアクセントの位置が書かれています(そのまま読むと若干違和感がある時もありますが)。

教師の役割とはなんなのか

教師の役割は生徒のモチベーションを保つこと、また、導くこと、そして、継続する理由を与えることなどが考えられます。昔のような黒板に板書し、生徒がそれを暗記するという方法も、私はシンプルで好きなのですが、最近はインターネットの普及もあってあまり使われないスタイルなのだそうです。特に、学校とは違い、個人で日本語を教えるケースの場合はやはり「圧力や義務感を与える」必要があるのではないかと思います。それこそが教師の役割のように思うのです。

外国語学習を継続することは簡単ではありません。「お金を払っているから、それがもったいなくてなんとか継続している」というのも良いと思います。それこそ教師に求めるべきものはその「圧力」であり、お金を支払うことによる「義務感」なのだと思うのです。ただ問題は、これは先ほどの「気軽に覚えたい」とは相反する考え方なのです。

独学ではどうしても理解できない文型が存在したりします。そうなると一気にモチベーションも下がります。それを教師に確認できる機会があれば、とても良いですよね。教師には生徒が理解できないところを「導く」役割もやはり存在します。しかし、そう毎回毎回「自分ではどうしても理解できない文型」というのが存在することもなく、じゃあ毎日なのか毎週なのか、月謝を払って教師に会い続けるというのも疑問です。そんなことをしたら「今日は質問はありません」の連続になります。

独学ではモチベーションの維持も簡単ではありません。単語を暗記したり、参考書で文型の練習をしたりと、どうしても単調になったりします。日本の文化の話を織り交ぜたり、たまには脱線してみたり、そういうことも母語話者の教師の役割の一つでしょう。

自分が生徒ならどうするか

教師には「モチベーションの維持」「理解へ導く」「圧力と義務感を与える」という3つの役割があると書きました。その3つのために外国語教師を探すなら、私は環境づくりを優先します。

4技能と呼ばれる「聞く・話す・書く・読む」。これらの中で独学では難しいのが「聞く」と「話す」です。なにしろこれは瞬発力が必要だからです。そして、その練習に必要なのは、教師ではなく、話し相手です。だから環境を整えます。ベストは外国へ行くことですね。日本語を学ぶなら日本へ行くこと。難しいなら、自分の国でできる限り対象の言語に触れること。

ただ、その前に基礎力を付ける必要があり、それは独学で十分だと考えます。問題といえば、私が極端な三日坊主であることだけ(それが一番大きな問題!!)

まとめ

生徒なら、基礎は独学で本やインターネットを活用する。継続が難しいなら月謝を払って義務的に学ぶ環境を整える。

先生なら、生徒のモチベーション維持、理解への導き、圧力と義務を与える。

今の段階ではこれが良いような気がしていますが、これからもたぶん試行錯誤していくのだと思います。