台湾東部の景勝地で最も有名なタロコ渓谷ですが、2024年4月3日の地震でタロコ渓谷も大きなダメージを受け、現在立ち入り禁止の状態となっています。
過去の写真などと一緒に現状を整理してみます。
目次
2024年4月3日M7.2花蓮地震
2024年4月3日の午前7時58分、花蓮地方を震源とした大きな地震が発生しました。規模はマグニチュード7.2(日本発表はM7.7)、最大深度は台湾の基準(ほぼ日本の基準と同じと言われる)で震度6強。
この地震は花蓮のみならず、台北や台南、台中でも大きな揺れを観測し、我が家も大きな揺れに襲われました。
被害状況
花蓮を中心に建物が傾くなどの被害が出ただけでなく、台湾全体で負傷者が発生しました。
2024年6月24日現在、人的被害は18人死亡、1155人負傷、3人行方不明という悲惨な結果になっています。
震源に離れた地域でもかなりの揺れだったので震源に近いところは本当に生きた気がしなかったのではないかと思います。
そして、東部台湾有数の景勝地タロコ渓谷では大規模な落石が発生し、壊滅的な被害を受け、内政部は4月8日、タロコ渓谷を無期限進入禁止としました。
タロコ渓谷 三段階の復旧過程
内政部国家公園署長の陳茂春氏は復旧に約30億元かかる見通しであることと、三つの段階に分けて復旧をすることを発表しています。
簡単に書くと、1つ目は至急通行が必要な地域を通行可能にすること、2つ目は安全対策等、3つ目は観光設備の復旧です。
東に行くほど被害は大きく、落石、山肌の崩落など、修復が必要な場所はまだまだあるようです。
開放済みのエリア
いくつかの地域はすでに開放されていますが、タロコ渓谷がすべて開放されているわけではないため、花蓮方面から車で行く場合、そこまでの道が通行止めになっている可能性があります。
とはいえ、いずれもかなり内陸の地域で、遠回りをすれば東海岸からでも行くことができるようです。
私はこれらのエリアまで行ったことはありません。かなり内陸になります。
奇莱
奇莱はタロコ渓谷の入り口から30kmほど離れた位置にある、奇莱主山という山のことで、いわゆる登山コースです。位置的にはタロコ渓谷の入り口から見て真西にあります。すでに開放済みだそうです。
南湖山域
南湖山域というのは南湖山域と書いているのは南湖大山という山の周辺地域で、この地域も奇莱同様に登山コースです。タロコ渓谷の入り口から見ると、西北西に位置します。直線距離では25kmぐらいですが、実際は40km~50kmぐらい移動しないと到着できない場所にあります。すでに開放済みだそうです。
合歡山
合歡山は奇莱主山の北西10kmに位置する山です。合歡山には道路もあるので、車で観光に行く方もいますし、台中方面から花蓮方面へ行く方もタロコ渓谷を通る道の場合は合歡山を通っていきます。すでに開放済みだそうです。
2024年中に開放予定のエリア
長春祠、布洛湾、九曲洞、天祥、蘇花地区等の遊憩区(休憩所)は2024年中に開放される予定だそうです。
一部、すでに行くことのできる地域もあるようですが、遊憩区(休憩所)が稼働していないと不便なこともあろうかと思います。
これらの中で天祥は行ったことがありません。
長春祠

長春祠はタロコ渓谷の入り口にほど近い場所(約1.5km)にあります。名前の通り祠(ほこら)で、タロコ渓谷の含まれる中部橫貫公路の工事中に亡くなった225名の作業員を祀るために1958年に建てられた祠です。
あいにく訪問した時は工事中でしたが、通常は歩いて近くまで行くことができるのだそうです。長春祠から滝のように流れ出る水を遠くから写真で撮影したものが多いです。
布洛湾
布洛湾は入り口から約5kmの位置にある地域で、休憩所やヘルメットを借りられる場所がある地域です。タロコ渓谷へ行ってヘルメットを借りた覚えのある方はおそらくここで借りています。
布洛湾吊橋(山月吊橋)
布洛湾には布洛湾吊橋(山月吊橋)という橋が架かっています。全長196m、高さ(渓谷の深さ)152~153m、橋幅は2.5mで、タロコ渓谷内で最も長い橋であるとともに、高さ(渓谷の深さ)が最も高い(深い)橋として知られます。
離職橋とも呼ばれているそうで、それは、その昔、日本統治時代にタロコ渓谷に派遣された日本人の警官がこの長くて危険な橋を見て辞職したと言われているからだそうです。
何度か修復などが繰り返されており、2021年8月に完成した地震前の橋は4代目の橋だったそうです。2022年には名前も日本統治時代からの名前である山月吊橋(日本統治時代は「山月橋」)から伝統的な呼び名の布洛湾吊橋に改めたそうです。当初入場は予約制でしたが、2022年9月から予約は不要になっていました。
しかし、この橋も地震による落石で甚大な被害を受けましたが、口コミサイトを見ると最近も写真が投稿されているので橋自体も復旧したのかもしれません。
九曲洞

九曲洞はくねくねとカーブする道が続くエリアで、布洛湾吊橋から4kmほど進んだところにあります。
花蓮地域からタロコ渓谷に行く場合、ここはほぼ確実に通る場所なので覚えている方も多いのではないかと思います。
九曲洞は地震による落石の被害が大きく、西側も東側も新しく作り直す必要があり、その工事は2026年までかかる見込みだそうです。
天祥
九曲洞からさらに3kmほど進むと天祥があります。天祥5つ星ホテルのシルクスプレイス タロコ(太魯閣晶英酒店)があることでも有名です。
天祥管理ステーション(ビジターセンター)などもあり、立ち寄ったことのある方も多いと思います。天祥からタロコ渓谷の入り口までを優先して修復する計画のようです。
天祥はいつか行ってみたいなとおもいつつ、今まで行ったことはありませんでした。今回の地震で簡単には行けなくなってしまいました。
蘇花地区
蘇花地区とは台湾北部の宜蘭県蘇澳と花蓮を結ぶ幹線道路周辺地域のことで、タロコ渓谷の中ではなく外側です。台湾東海岸の海沿いの地域を指します。
台北から花蓮に車で行く時は必ず通る地域です。実際私も車で通ったことがあります。スピード違反取り締まりのカメラが多いという噂の地域です。
2031年に開放予定のエリア
最も被害が大きかった地域である砂卡礑、燕子口は開放まで7年を見込んでいるようです。
砂卡礑

砂卡礑歩道はタロコ渓谷の入り口からタロコビジターセンターを経由して約1km~1.5kmの位置から続く歩道で、突き出した岩の下を通ったり、ただでさえちょっと怖いと思うような歩道でした。
全長4.1kmの長い歩道で、眼下にはターコイズブルーに近い色の川(砂卡礑溪)が流れています。

4月3日の地震により、この歩道で複数の方が犠牲になられています。
この砂卡礑歩道は特に被害が大きく、その後のニュースなどでも繰り返し様子が放映されました。落石も一つや二つではありませんでした。
燕子口

布洛湾吊橋からさらに500mほど内部に進むとあるのが燕子口。壁面には地下水や川の水が侵食してできた穴が複数開いています。
以前はその穴にヒメアマツバメやリュウキュウツバメが営巣していたそうなのですが、開発が進むにつれてこれらのツバメはいなくなってしまったのだそうです。
この燕子口も復旧までにかなりの時間がかかるそうです。個人的に燕子口から西方面を見た時の風景が好きでした。
最後に
台湾東部で最も有名な観光地と言っても良いタロコ渓谷。今後どのように復旧するのか注目していこうと思います。
最後になりましたが、犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた方々の一日も早いご回復をお祈りいたします。