桜の変異種と交配品種

この時期、桜に関するニュースが増えてくるように思います。今回はちょっと気になった「白い桜」についてのお話です。

ピンクの桜と白い桜と濃いピンクの桜

桜は濃淡の違いは有れど、ピンクの花を咲かせることが多いです。中にはピンクのピの字も感じさせないぐらい白い桜も存在しますし、逆に沖縄の桜のように濃いピンクの桜も存在します。

白いカンヒザクラ

沖縄タイムスに掲載された白い桜の記事。

  • 題名:あれ突然変異かな? 人々の目を引く「白い花」のサクラ 10年前に発見
  • URL:https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1101444

白い花のカンヒザクラだというその桜、確か台湾でも同じような話を聞いたような気がしました。記憶を掘り返してみたところ、台湾の緋寒櫻という桜の突然変異種と考えられている福爾摩沙櫻(白花山櫻花)の話でした。

日本のカンヒザクラ(寒緋桜)と台湾のヒカンザクラ(緋寒櫻)は同じもの

沖縄で見ることのできる濃いピンクの桜はカンヒザクラと呼ばれ、花が下向きに咲くのも特徴の一つ。このカンヒザクラは台湾で山櫻花やヒカンザクラ(緋寒櫻)と呼ばれる桜に酷似しており、調べていくとどうやら同種なのではないかという結論に至りました。

そもそもヒカンザクラ(緋寒櫻)という名称が日本にもあり、それをカンヒザクラと呼ぶようになったのだとか。彼岸桜(ひがんざくら)と似ていたからだそうです。

学名はCerasus campanulata(サクラ属の分類)かPrunus campanulata(スモモ属の分類)。これを日本ではカンヒザクラ(寒緋桜)や緋桜と呼び、台湾では台灣山櫻花や単に山櫻花、緋寒櫻、緋櫻などと呼びます。英名はいずれもTaiwan Cherryです。

台湾のヒカンザクラ(緋寒櫻)の変異種『フォルモサ桜』

台湾にはフォルモサ桜(福爾摩沙櫻)という、真っ白な花を咲かせる桜があります。このフォルモサ桜はミドリザクラ(緑桜)/リョクガクザクラ(緑萼桜)と非常に似ていますが、台中にある機関(農業試験所)がミドリザクラ(緑桜)/リョクガクザクラ(緑萼桜)ではなく、台湾のヒカンザクラの変異種で、台湾原産の種として登録しました。登録年は2009年だそうです。

このフォルモサ桜は学名Prunus campanulata var.(var.は変種という意味)で、英名はFormosa Sakura。なお、フォルモサ(Formosa)とは台湾島のことを指し、美しい島という意味のポルトガル語だそうです。

特徴は花萼が緑で、毛はなく、萼裂片が外向きということ。ミドリザクラはネットで検索すると、似ているように見える写真もあるし、似ていないように見える写真もありますが、どうやら萼裂片が外向きの写真は多くないようです。そこが見分けるポイントなのかもしれません。

なお、ミドリザクラはマメザクラの変異種だそうです。

カンヒザクラの変異種(日本)とヒカンザクラの変異種(台湾)

今回沖縄タイムスに掲載された白い桜はカンヒザクラの変異種と考えられるものだそうです。フォルモサ桜がヒカンザクラの変異種だとするならば、そのカンヒザクラの変異種もフォルモサ桜に似ている桜なのかもしれません。

私は白い桜が好きで、どのような品種でもぜひ見てみたいなと思っています。台湾のフォルモサ桜もまだ見たことがないので、いつか見に行ってみたいです。

登録されたばかりの桃陵八重桜

白い桜と言えば、完全な白ではなさそうですが、新しく桃陵八重桜の里親募集の記事が気になりました。

  • 題名:発見した新品種の桜で「桜の街道」を作りたい 100本の苗木育成に向け、里親募集中
  • URL:https://www.hotosena.com/article/14825519

桃陵八重桜はヤマザクラとオオシマザクラの交配品種と推定され、2021年に新品種として認定されました。

変異種や交配品種など、桜には多くの品種があります。しかもそれは最近になっても増え続けています。いろんなタイプの桜が観賞できるこの時代、桜好きの私としてはうれしい限りです。

上記の記事ではこの桃陵八重桜で桜街道を作ろうとされている方がいて、その桜の鉢植えの面倒を見てくれる方を探しているそうです。ぜひぜひ立候補したいところですが、なにぶん、私は台湾在住のため、そんな願いが叶うわけもなく、遠くから見守ることしかできません。

桜街道というのは作るのにかなりの時間がかかるのだそうです。記事の中では最盛期は50年後とありました。過去にもこうやって桜の街道を作ろうと努力してくださった方が多くいるから、今日の私たちは様々なところで桜街道を見ることができるのですね。感謝しかありません。

台湾でも桜を植樹

台湾でも桜を植えて、桜の街道などを作ろうとしている自治体がいくつかあります。ただ、気候の違いもあるのか、うまくいっているところはそれほど多くないようです。中には一万本以上の桜の木を植えたものの、そのほとんどを枯らしてしまったという自治体もあります。残念。

最後に

カンヒザクラの変異種にしても、新しく登録された交配品種にしても、やはり桜はキレイだと感じます。台湾に住んでいると日本ほど桜を見る機会は多くありません。でも、桜が生えていないわけではありません。家の近くで桜を観賞できる場所をもっともっと探してみたいと思っています。